サクラは主として北半球の温帯に広く分布していますが、美しい花の咲く種類はアジアに多く、しかも日本列島が中心で、多くの種類が集中しています。また、中国や朝鮮半島にもかなりの種類があり、日本と共通の種類もあります。その他、中国の奥地やヒマラヤ地方などには、日本のものと種類は異なりますが、ヒマラヤ桜のように美しい花の咲く種類が分布しています。ヨ-ロッパには、日本の桜のように花の美しい種類はなく、サクランボ、いわゆるミザクラの類があります。北米大陸には、我が国にもあるウワミズザクラに近いような種類や、常緑の種類などはありますが、これらは、日本人の持っている桜の概念からかけ離れた種類ばかりです。
サクラは植物学上、バラ科、サクラ亜科、サクラ属の落葉高木または低木の樹木です。サクラ属はサクラ、ウワミズザクラ、スモモ、モモ、ウメ、ニワウメの6亜属に分けられます。一般にサクラとして鑑賞されている花の美しいものは、サクラ亜属に含まれているものです。
日本にはヤマザクラ、オオシマザクラなど9種を基本にして、変種をあわせると100以上のサクラが自生しており、沖縄には野生化した(といわれるカンヒザクラ)があります。また、これらから育成された園芸品種は200以上もあります。
我が国の山野に自生する野生種の基本種とされる9種と、沖縄のカンヒザクラは下記の桜です。また、これらから育成された園芸品種は、花色は白から濃紅色、花弁数は5から350を越えるものまで、花弁の大きさも小から大と多彩です。
一般に桜は、春になると一度咲きますが、品種によっては十月桜や冬桜のように9月〜12月と2〜3月の2度にわたって咲く品種もあります。また、開花期もカンザクラ類のように早春に咲くものや晩春に咲くものとたいへん変化に富んでいます。南北に長いわが国では、1月下旬、南の沖縄を皮切りに北の北海道まで、約5ヶ月にわたり桜前線が日本列島を縦断します。桜前線は、全国各地で最も多く植えられている染井吉野の開花日を線で結ぶと天気図の前線の動きに似ていることから名付けられました。また、南北の緯度差だけでなく、標高差によっても遅速があり、標高が100m上がるごとに2〜3日遅れます。
サクラには、ミネザクラ、チシマザクラのように、高さが2m前後の低木から、ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンのように20m以上の高木になるものまであります。主な枝は斜上するが、枝の垂れるシダレザクラや枝が横に広がる染井吉野、普賢象、箒状となる天の川、泰山府君など樹形に特徴のあるものもあります。また、同一の種類でも育つ環境によって樹形は異なります。